【プラグイン】アンプシミュレーターソフトのおすすめを網羅的に比較
近年、高品質なアンプシミュレーターソフトの選択肢が増えています。当記事では定番からマニアックなものまで、おすすめのアンプシミュレーターソフト(プラグイン)を網羅的に比較紹介します。
※本記事は有料製品に絞って取り上げていますので、フリーのアンプシミュレーターについてはこちらを御覧ください。
はじめに:アンプシミュレーターとは?
はじめに、アンプシミュレーターとは何かや、この記事の趣旨について話をします。
アンプシミュレーターとはその名の通り、ギターアンプやベースアンプの音をシミュレート・再現して鳴らす機材です。
本物のアンプを使わずにデジタル技術によって再現した音を鳴らすというのがポイントですね。
アンプシミュレーターにはハードウェアとソフトウェアの製品があります。
用途で概ね以下のように棲み分けることが出来るでしょう。
- ハードウェア:バンドマン向け
- ソフトウェア:DTM向け
ハードウェアアンプシミュレーター
バンドマンなら Kemper や Axe-FX といった名前を聞いたことがあるかも知れません。
これらは実機アンプやエフェクターと同じような筐体を持ち、その中にアンプシミュレーター機能が入っているものです。
これらは1台でいくつものアンプの音が再現出来るほか、実機アンプと同じような使い方でもラインでも使えるのが強みです。
ソフトウェアアンプシミュレーター
一方、ソフトウェアのアンプシミュレーターは DAW または PC 上でプラグインとして動作するものです。
こちらは宅録 DTMer でもコンピュータ上で手軽にエレキギターやエレキベースの音を楽しめるのが強みです。
打ち込み音源にも使える点や、筐体がないのでハードウェアに比べて安いというメリットもあります。
デメリットとしてはコンピュータが必要な他に、音質がイマイチという点がありましたが、ここ数年でかなり進化していて本物のアンプで REC したものと遜色ないクオリティが出せるようになってきています。
この記事の趣旨
この記事では、DTMに最適なソフトウェアアンプシミュレーター(プラグイン)についておすすめを紹介していきます。
近年は高品質な製品が続々出ており、DTM 関連のメディアでよく見かけるものは勿論、それ以外にも様々な良い選択肢があります。
ここでは様々な選択肢を知って頂けたらと思い、筆者が良いと思ったものを片っ端から紹介していきますので、長いですが是非お付き合いください。
総合型アンプシミュレーターソフト
ジャンルやアンプメーカーなどを跨いで多くのアンプモデルを扱える、これ1つ買えば多くの用途に対応できる、そんな製品を総合型としています。
Positive Grid – BIAS FX
総合的におすすめしやすいのが Positive Grid の BIAS シリーズ(BIAS FX / BIAS AMP)です。
BIAS FX は、下述する BIAS AMP のアンププリセットとエフェクター類を組み合わせてギターの音作りが一通り完結できるフルパッケージ製品になります。
機能が豊富かつ幅広いジャンル対応、そしてお値段も安めです。音質も良い音と感じやすいと思います。(BIAS AMP の項目で詳しく記載)
BIAS AMP なしでも使えるので BIAS を検討する際はこちらから買うと良いでしょう。
商品情報
Positive Grid – BIAS AMP
BIAS AMP は、物理シミュレートによってアンプの内部から設計が可能、自分だけのオリジナルアンプを作れるのが特徴のプラグインです。
作ったアンプモデルは BIAS FX に読み込んでエフェクターと組み合わせて使うことが出来ます。(逆に言うとこちらはアンプ部分のみになります)
音質は物理シミュレートで自作という特性上リアル系ではないものの、良い意味でデジタルの旨味を享受したようなハイファイで奥行きのあるわかりやすい良い音を出してくれるので、「あの機材のあの音やあの質感」に拘らない限りはおすすめです。
商品情報
STL Tones – STL ToneHub
STL ToneHub はキャプチャした音響データを鳴らす、いわゆるプロファイリング型のアンプシミュレーターです。
Kemper などのプロファイリングで培ったキャプチャ技術をソフトウェアに落とし込んだもの、という感じ。
有名アーティストやプロデューサーによるプリセットが豊富で、それらを読み込むだけでプロが用意した実機の音を自分の DTM 環境で鳴らせるのが強力です。かつ各種エフェクトもパッケージングされていてギターの音作りを完結させられます。
上記の BIAS とは逆に、プラグインでリアル系の音を求めるなら恐らく最も有力な選択肢になるのではないかと思います。
商品情報
STL ToneHub | Every Tone You Need, In One Place
STL Tones – STL AmpHub
同じく STL Tones から、こちらの AmpHub はモデリング型の総合パッケージです。
下述の Amplitube などと同じように、ソフトウェア内で使えるアンプモデルやエフェクターを組み合わせて、自分でセッティングを追い込んでいくことが出来ます。(凄くシンプルに言うと STL版Amplitubeなんですが)
ToneHub と比べると良くも悪くもシミュレーターチックな質感に寄るものの、STL Tones らしいモダンな高音質がやはり魅力です。
商品情報
Overloud – TH-U
近年高品質な Gem(プラグイン)で話題になることが増えてきた印象の Overloud 社が手掛けるアンプシミュレーターが TH シリーズです。
Amplitube や BIAS FX と同様に多数のアンプモデルやエフェクト類がオールインワンになったフルパッケージ製品ですが、TH-U はその収録数がとにかく多いです。Randall など一部公式のモデルも収録されています。
また、プロファイリングデータの仕様も可能なので、モデリングもプロファイリングもどちらも使えるのが魅力です。
商品情報
以下は、収録モデルを絞って価格を下げた各種バーションです。
IK Multimedia – Amplitube
長い間ソフトアンプシミュレーター界をリードしてき印象が強いのが IK Multimedia の Amplitube です。
アンプ・キャビネット・エフェクターが1つになったフルパッケージの製品です。Custom Shop という機能を使って各モデルを単体で購入することも出来ます。
Orange や Mesa-Boogie などアンプメーカー公式のモデリングを多数扱っているのが面白く、好きなメーカーの好きなアンプをモデリングで好きなように料理できるのが楽しいですね。
音は良くも悪くも「これぞアンプシミュレーター」といった感じ。近年は競合に押され気味な気もしますが、開発は続いているようなので巻き返しに期待したいです。
商品情報
「MAX」は拡張パックを含めた全部入り
単品・特化型アンプシミュレーターソフト
単一のアンプの製品や、特定のテーマ・ジャンルに特化した小規模のパッケージ製品をこの枠で紹介します。
JST – Toneforge
Joey Sturgis Tones (JST) 製のアンプシミュレーター Toneforge シリーズ。(ベースアンプは Bassforge)
JST の代表である Joey Sturgis 氏はメタルコア界隈の有名プロデューサーで、Toneforge シリーズでもハイゲイン系の強力なアンプシミュレーターをラインナップしています。
2000年代後半以降のメタルコアや Djent などの加工感強めのサウンドを支えたノウハウが詰まっているので、良い意味で作り物感や製品感の強い質感が強みと言えます。
商品情報
日本でも人気のメタルバンド Arch Enemy の Jeff Roomis モデル。
Djent の生みの親、Periphery の Misha Mansoor モデル。
メタルコアバンド Asking Alexandria の Ben Bruce モデル。
Chelsea Grin や Born Of Osiris などを渡り歩いた Jason Richardson モデル。
以下はオリジナルモデルです。
Neural DSP 製品各種
Neural DSP という最先端系のモダンハイゲインなプラグインを中心に販売している尖ったデベロッパーがいます。
Omega Ampworks や FORTIN などのマニアックなモダンハイゲインアンプをの単品プラグインや、Gojira や Tim Henson など尖ったシグネチャーのテーマ型製品(Archetypeシリーズ)があります。
各製品ともハイファイでバキッとクリアな感じ、シミュレーターらしさの良い部分を突き詰めたような端正な質感は、どの製品もちょっと鳴らしただけで「あ、良い…」と思わされるクオリティがあります。
商品情報
STL Tones – Tonality シリーズ
Tonality は、Neural DSP の Archetype シリーズのようなアーティストシグネチャーのテーマ型アンプシミュレーター製品です。
Andy James, Will Putney, Josh Middleton 等といった、モダンメタル界で実績のある著名人の機材をモデリングした小規模パッケージ製品を展開しています。
テーマ形で使える範囲は絞られるものの、やはり Archetype と双璧をなすようなモデリング型アンプシミュレーターの最高峰的な印象を受けます。
商品情報
Plugin Alliance (Brainworx) 製品各種
ミキシングやマスタリングのプラグインでお世話になっている DTMer も多いであろう Plugin Alliance ですが、アンプシミュレーターの販売も行っています。
ENGL、Diezel、Freidman、Ampeg など、著名な実機アンプのプラグインを単体販売しています。
全体的にややウォームな質感が強いですがモデリング型のシミュレーターとしてはリアル志向で、立体感や解像度感が高く、上品な良い製品を作っている印象です。
また殆どの製品は UAD としても販売されています。
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ML Sound Lab – Amped シリーズ
2020年代に入って高品質なアンプシミュレーターを連発している ML Sound Lab というデベロッパーがいます。
ここのアンプシミュレーター「Amped」シリーズはリーズナブルめでありながらも高品質でモダンクリアな感じのアンプシミュレーターです。傾向としてはシミュレーター的な端正さとややブライトな印象が強いです。
Dover Amps というブリティッシュ系のブティックアンプをモデリングした「Amped Super Duper」や、Mesa/Boogie Mark V の「Amped ML5」、PRS Archon の「Amped Ark」など、ラインナップも面白いです。
商品情報
Softube – Marshall Amps 各種
Marshall と正式にパートナーシップを結び、公認のアンプシミュレーターを開発しているのが Softube。
伝説のヴィンテージマーシャル Plexi Super Lead 1959(通称「プレキシ」)や Silver Jubilee 2555 など…往年のロック・メタル好きが唸ること間違いなしなマーシャルアンプがプラグインで手に入ります。良い時代ですね。
中でもスラッシュメタルのレジェンド Slayer の Kerry King シグネチャーモデルは、Djent 系が多いハイゲインアンプシミュレーター界隈では貴重な存在に思います。
品質はさすが Softube といった感じで、ちょっとデモを聴いただけでもびっくりするくらいリアルで良い音をしています。
マーシャルらしい高域のジャキジャキ感とか凄く再現されているし、立体感があり生々しい質感。スタジオに置いてあるくたびれたマーシャルではない良いマーシャルの音がします。
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↓筆者個人的にはまだ様子見なのですが、Amp Room というフルパッケージ系製品も同時期に発売されています。
Nembrini Audio 製品各種
Nembrini Audio は、Brainworx (Plugin Alliance 製品各種) のアンプシミュレーター開発に携わっているデベロッパーで、自社製品も品質が高いです。
どれも公式モデリングではないですが、ラインナップはそこそこ充実しています。珍しい Darkglass Alpha Omega をモデリングした製品もあるのでベーシストにも良き。
傾向は Plugin Alliance 製品と近いモデリング型としてはリアルな方向に感じますが、ウォームなあちらに比べてこちらはソリッドな印象。
商品情報
Bogren Digital / AmpKnob – RevC
メタル界の著名なプロデューサーである Jens Bgren 氏によるアンプシミュレーターです。
期待通り、スウェディッシュ系のザクザクな音が出て格好良いです。
ゲインのみのワンノブ仕様で音作りに迷わないのも特徴です。トーンを追い込むことは出来ずとも、困ったらとりあえず Jens Bgren 氏が用意した音が出るこれを挿しておけば良い的な安心感があります。
商品情報
Kuassa 製品各種
少しマイナーですが、インドネシア発の Kuassa を紹介します。
ここはリーズナブルでそこそこ良いアンプシミュレーターやエフェクター系プラグインを販売している隠れ良デベロパーといった感じ。
全体的に Amplitube 系のシミュレーターちっくな音ではありますが、サッパリしていて扱いやすいです。
Marshall アンプ3種類をモデリングした Amplifikation Caliburn(上記イメージのもの)や、Fender アンプ3種類をモデリングした Amplifikation Matchlock が特におすすめです。
商品情報
Audio Assault 製品各種
メキシコのデベロパーです。私のような半端なメタラーだと Nuclear Assault や Blutal Assault とごっちゃになりがちなデベロパー名です。
ミキシング系プラグインとアンプシミュレーター系を半々くらいで扱っており、オリジナルモデルのアンプシミュレーターを中心に複数モデルの展開があります。
メキシコというと、メタリックハードコアやゴアグラインドなど、メタルの中でも特に過激なジャンルが盛んなイメージがありますが、そんな土地柄かアンプシミュレーターのラインナップはほぼエクストリームメタル系。そちら系を好む方におすすめです。
各製品が値下げになっていることも多く、コスパも良いです。
商品情報
その他
Blue Cat Audio – AcouFiend
アンプシミュレーターと組み合わせて使うものになるのでその他枠としますが、紹介させてください。
これまで DTM(ITB)では再現不可能だった、ギターのフィードバックノイズを鳴らすことが出来るプラグインです。
ニッチではありますがあると表現の幅が広がります。特にバンドマンから DTM に流れた方には嬉しい機能のプラグインではないかと思います。
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非推奨
以下は他のメディア様でおすすめされている場合もありますが、「能動的にアンプシミュレーターを購入する」場合の選択肢としては、筆者としては推奨しないものになります。理由も其々記載しています。
Waves – GTR3
GTR3 は、Waves のプラグインバンドル(Gold 以上)を買うと付いてくるので、持っている方も多いと思います。
PRS Supermodel の礎となったレジェンドプラグインではありますが、発売が2007年とかなり古いため、現代の基準で見るとクオリティは厳しいです。(逆に、アンプシミュレーターって2010年代以降に凄く進化したんだなと感じさせられます)
工夫して使う事も出来なくはないですが、あくまでバンドルのおまけ程度に考えた方が良いと思います。
Native Instruments – Guitar Rig
Native Instruments 製のアンプシミュレーター、Guitar Rig の魅力は「Komplete を買うと付いてくる」という点です。
「Guitar Rig 6」になってからは幾らか戦えるクオリティに進化したものの、依然としておもちゃっぽさが残り、ギタリストにとってグッとくる代物なのかというと疑問が残ります。他に良いアンプシミュレーターがある中で敢えて選ぶ理由は見つけにくいです。
あくまで Komplete を買うことが目的なら一緒に付いてくるものとしては十二分ですが、「アンプシミュレーターを購入したい」という目的の選択肢には入れにくいと思います。
結局どれを買えば良いの?
色々なアンプシミュレーターがあるのは分かったけど結局どれを買えば良いの?
結論から言うと最もおすすめの買い方は、試奏してみて気に入ったものを買う、です。
多くのプラグインがフリートライアルなどで入り口を無料にする商品設計をしていますし、いくらレビューやデモ動画を見ても、最終的には自分で弾いてみたり自分でミックスしてみないと分からないです。これすごく重要です。
もし筆者の主観で具体名を出すとすれば、あくまで参考までにですが、初心者やあまり拘りがない方なら BIAS FX が無難かなと。
一方でメタルなどのギターが非常に重要な音楽をやる場合は、Neural DSP や STL Tones のようなハイエンドに手を出す事をおすすめします。
さいごに
長い記事をここまで読んでくださりありがとうございました。
繰り返しになりますが、最終的には自分で弾いてみたり自分でミックスしてみないと分からないので、試奏して気に入った製品を手に入れていただきたいです。
当記事のようなメディアは「こういう製品があるよ」という所までは全力でお伝えできますが、その製品にどういった価値を見出すかはご自身次第です。
また、調べるとどうしても同じような著名な製品の情報ばかりが出てくるかとは思いますが、いちアンプシミュレーター好きの端くれとして、それ以外のものも含めた情報をお伝えできたら、それによって少しでも機材探しのお手伝いができたら幸いです。