STL ToneHub がお気に入りです【アンプシミュレーター】

STL Tones から ToneHub というアンプシミュレーターが発売されましたが、結論メチャクチャ気に入っています。日本の DTM 界隈ではややマニアックな商品かと思いますが、 STL Tonehub について紹介していきたいと思います。

STL ToneHubとは

STL ToneHub は、STL Tones というデベロパーが2020年に発売したアンプシミュレータープラグインです。

STL Tones はもともと、Kemper や Axe FX 等のハードウェアアンプシミュレーターのプロファイリングデータを販売していて、Emissary を取り扱うようになった(会社ごと買収した?)辺りからプラグインアンプシミュレーターにも力を入れるようになってきたと思います。

他には Tonality や AmpHub、チャンネルストリップ系の ControlHub 等といったプラグインを出しています。海外の有名なバンドやプロデューサーを起用したモダンメタル系に強いプロダクトが多いですね。

今回紹介する ToneHub は、同社のプロファイリング技術をプラグインソフトウェアで使えるようにしたアンプシミュレーターと言えます。

単品の購入の他にサブスクでの利用も可能です。

プラグイン版Kemper?

ToneHub を語る際によく目にする(気がする)のがプラグイン版 Kemper という例え。

ToneHub はプリセットと呼ばれる音響キャプチャデータを読み込んで鳴らす仕組みのアンプシミュレーターです。

この仕組みが Kemper のプロファイリングと同じようなものだからそう言われるのだと思います。

なのでキャプチャデータのプリセットありきであり、一般的なモデリングタイプのアンプシミュレーターとはコンセプトが異なる商品です。

キャプチャデータについて。これは、特定の機材を特定のセッティングで鳴らした時の音響特性を保存したものです。例えば、「マーシャルをアンプ直フルテン&メサキャビで鳴らしてSM57をセンターに立てて集音した時の音響特性」といったデータです。
Tonehub や Kemper は、そのデータを読み込むことでアンプシミュレーターとして音を再現するという雰囲気のものです。間違っていたらすみません。

機能と使い方

上述の通り、基本的にはキャプチャデータを鳴らすためのソフトですが、エフェクトやチューナーなどが内包されていてギターの音作りが一通り完結できるオールインワンパッケージになっています。

STL ToneHubの画面

GUI はこんな感じで、セクションは大きく分けて3つです。

左のセクションで拡張パックを選択し、上のセクションでプリセットを選択し、下のセクションで音作りの設定をします。

プリセットにはキャプチャする際に使われた機材が記されています。プリセットにもよりますが、ギターやそのピックアップまで記載されており結構詳しく書かれています。

下部の音作りセクションは一般的なプラグインアンプシミュレーターと同じ感じで、アンプやキャビネットやエフェクトに関する設定や調整ができます。項目や GUI は全プリセット共通です。

STL ToneHubのStomp画面

前段のストンプセクションです。初期verはコンプとOD3つでしたが、徐々にアップデートされて執筆時点ではOD6種、オクターバーやグライコなど色々増えています。ODの使用状況はプリセットに従ったほうが良い気がします。

STL ToneHubのAmp画面

アンプヘッドセクションです。こちらも全プリセットで共通になります。

見た目はアンプのつまみですが、中身は恐らく別物。キャプチャデータに対して上から調整をする感じのものと思われます。EQ はまあ使えるとしてもゲインはあまり効かないです。

STL ToneHubのCabinet画面

スピーカーセクション。

キャビネットやマイクの種類はキャプチャしたものになるので変更できませんが、マイクポジションの調整は色々できます。ここで結構音を作り込むことが出来ます。

センター/エッジや距離の設定に加え、角度の調整が出来るのが良いですね。角度をつけるとミドルが出つつ角が取れていく感じで結構使えます。

STL ToneHubのEQ画面

EQ です。フィルター、ローシェルフ&ハイシェルフ、ピークが2バンドの構成になっています。モダンな冷たい感じで結構しっかり効きます。

STL ToneHubのEffect画面

最終段のエフェクトパネルでは、ディレイやリバーブなどの空間系エフェクトが扱えます。こちらもアップデートで色々増えていますね。ストンプっぽい音ではなくクリアでハイファイな音なので、好みは分かれるかもしれませんが私は好きです。

ちなみに、ギターガチ勢の方以外はそもそも使用しないとは思いますが、自分でキャプチャデータを作る機能はありません。

とても良い音

なんだかんだ言っても鳴らした時の音が全てと言っても過言ではないですよね?

実際どうなのかというと、メチャクチャ良い音してると思いました。

色々なアンプシミュレーターを試しまくっている私ですが Tonehub は即決しました。

プロがキャプチャしたデータを鳴らせるわけですからやはり良いです。

音の傾向としては、Tonehubそのものは色付けがなくモダンでクリアでハイファイ、他のアンプシミュレーターにありがちな特有の音の傾向みたいなものは感じないです。殆どプリセットによる印象です。

プリセットは標準で付いている Core Pack はややローよりの物が多く、拡張パックはややハイ寄りのジリっとしたものが多いですかね。

あくまで個人的な好みですが、読み込んだままので100点満点なプリセットよりも、マイクの調整等を少し入れると化けるようなものが多い印象です。

拡張パックが豊富

STL ToneHubのプリセットパック

プリセットベースであるが故に、プリセットの拡張パックが豊富に展開されています。

初期状態で同梱されている Core Pack には約60種類のプリセットが収録されておりこれでも十分良いのですが、拡張パックを買い足すことで引き出しを増やしていけます。

プリセットの商品展開は、メタルコアやその周辺界隈の有名プロデューサーやアーティストを起用したものが多く、この手の音楽が好きな人にとっては「あのバンドのあのトーン」が簡単に手に入るという点も魅力的です。

それらを知らない人にはワケがわからないのが玉に瑕ですが、Mesa や Diezel 等のアンプ毎のパックもあります。

CPU負荷について

キャプチャしたデータを再生するという特性によるものなのか、一般的なモデリングタイプのアンプシミュレーターよりは若干 CPU 負荷が軽い傾向にあるようです。

ただし、エフェクターを沢山使うとその限りではなくなるというか寧ろかなり上がりますが。。

ライブでも使える!?

これは厳密には ToneHub の特徴ではないのですが、ライブでもほぼ同じ音を出すことが可能です。

というのも、ToneHub の拡張パックは Kemper 用にも同等のものが販売されているので、それを使えば Kemper から同等の音が出せます。

Kemper ユーザーが ToneHub を使うのかというとよく分かりませんが、参考までに。

まとめ

お気に入りのプラグインです。

アンプシミュレーターらしさみたいな点では Neural DSP 等に軍配が上がりますが、リアルな良い音という点ではプラグイン最高峰と言っても良いのかなと。

また、基本的にプリセットを読む+微調整だけなので、色々カスタム出来るのが当たり前のアンプシミュレーター的な感覚では物足りなく感じるかもしれませんが、個人的にはかえって音作りの沼にハマらなくて助かります。

モダンメタル系強めですが、それ以外のプリセットもしっかりあってクランチやクリーン系も高品質です。寧ろそちら系こそモデリングには出せないリアルさが強みになるとも言えます。

興味のある方は是非フリートライアルから試してみてください。

共通して言える事ですが、いくらレビューやデモ動画を見ても最終的には自分で弾いてみたりミックスしてみないと分かりませんので。

商品情報

STL ToneHub | Every Tone You Need, In One Place