【JST】Bus Glue Joel Wanasek レビュー【バスコンプバンドル】

JST (Joey Sturgis Tones) から出ているプラグイン、Bus Glue Joel Wanasek を紹介します。お手軽で効果の高い、化学調味料的なバスコンプのバンドルです。

Bus Glue Joel Wanasek とは

JST Bus Glue Joel Wanasek は、プロデューサー兼ミキシングエンジニアの Joel Wanasek 氏と JST (Joey Sturgis Tones) が共同開発したバスコンプレッサープラグインです。

目的の楽器ごとに全部で6種類のバンスコンプが開発されており、それぞれ単品で購入もできますが、今回紹介するのはそれらをひとまとめにしたバンドル製品です。

つまるところ Joey Sturgis 氏 と Joel Wanasek 氏という、メタルコア界隈の実力派プロデューサーがタッグを組んだ製品とも言えますね。

なので基本はモダンメタル系に強い製品ですが、紹介動画や GUI から見ても分かる通り、モダンな EDM などのエレクトロ系ミュージックにも使っていけるという事を打ち出しているようです。

個人的にはもちろんメタル用途での使用を想定しての導入となります。

バンドルの内容

バンドルには目的の楽器ごとに全部で6種類のバンスコンプが同梱されています。それが以下になります。

  • JW BG-Drums
  • JW BG-Vocals
  • JW BG-Guitars
  • JW BG-Bass
  • JW BG-Keys
  • JW BG-Mix

そのまんまですがそれぞれ、ドラム、ボーカル、ギター、ベース、キーボード、ミックスバス用ですね。それぞれバストラックに挿して、ピタッとしたモダンな音像にすることが出来ます。

単品だとそれぞれ $59 くらいしますが、バンドルだと確か定価で $149 くらいなので大体半額程度になります。私はセール時に $99 で購入しました。

特徴と使い方

使い方は非常にシンプルなものとなっていて、基本的な使い方は Waves の L 系のようにスレッショルドとアウトプット量を設定するだけです。

挙動や使用用途、想定ジャンルからしても、L 系をミキシングに使うテクニックから影響を受けていそうな感じがしますね。

基本設計をそのような形とし、各製品ごとに、そえぞれ用途に最適化したプラスアルファの調整要素が追加されています。

簡単に1つ1つ見ていきたいと思います。(イメージは公式から拝借しました)

JW BG-Drums

ドラムバス用。ドラム用では、挙動を「STANDARD」と「PUMPIN’」から選ぶことが出来ます。

どちらも通すとバウンシーでピタッとした感じにまとまりますが、PUMPIN’ にすると更にバウンシーに、ペチペチした感じになります。

JW BG-Vocals

ボーカル用。個人的にはボーカルってバストラックにまとめることがあまりないのでそのままトラックに挿しています^^;

こちらは「TONE」と「AGGRO」という項目があります。TONE は上げていくと丸くなり、AGGRO は逆にエッジィになります。両方上げると相殺されるのではなく独特の加工感が出てくるのが面白いです。

JW BG-Guitars

ギター用。主にディストーションギターのバストラックを想定しているはずです。

「CHUG SLAYER」という項目があり、とりあえず名前が最高なんですけれども(笑)、その名の通り、適用するとブレイクダウンやチャグり系のフレーズが明瞭になります。

CHUG SLAYER を通すとブリッジミュートでズンズンやった時の籠りやうねりがクリアになる感じ。これやると一気にメタルコア系のまとまり感が出てきますね。

JW BG-Bass

ベース用。これだけは少し難しく、バスコンプの域を超えてかなり音作りが出来る仕様になっています。

まず、MODE という項目が TOP と BOTTOM に分かれていますが、要は高域と低域を別々に処理する仕様になっています。

わざわざスプリットしてからバスに纏めなくても、バスでやっちゃえば良いよという事なんでしょうが、必ず両方別々に処理しないといけないのでバストラック以前で音が決まっている時には使いにくいですね。。

BASS POSITION は見た目の通りですが、ベースをキックの上に配置するか下に配置するかを調整できます。メタルでキックの下ということはまずないと思いますが、EDM 系もいけるようにしたかったんでしょう。というかそれってもう EQ やん。

また、GRIT はディストーションです。ご丁寧に A~C 3種類の歪みを付加することが出来ます。DRY / WET の調整は出来ますが過激に歪むので原音から大きく音が変わります。バスコンプとは。

JW BG-Keys

キーボード用。ここには「PUSH」という項目があります。

これは上げていくと高域がブライトになっていくのと、ステレオイメージャー的な要素も入ってきて広がりが出てきます。なんというか、DOTEC-AUDIO の DeeWider と DeeCrystal を合わせたような機能です。あちらほどド派手ではないですが。

ちなみにこれ、ラウドなバンドサウンドにシンセなどを混ぜる際に最適な感じで凹凸が均されたダイナミクス感になるので、バンドアレンジにシンセを入れたい人にはかなり良いと思います。

JW BG-Mix

これはマスタリング前の2MIXに最終コンプ的に適用する用途のものですね。

「#nosmalltime」ボタンは、Joel Wanasek 氏の秘密のマスタリングソースだそうで、とりあえず適用しておけばOK。自然にサチュレーションなどでエンハンスされるのと若干 M/S のサイドが出てきます。

更に TRANSFORMER を3種類から選ぶことが出来ます。3種類の違いはマニュアルを読む限り以下のような感じ。言われてみればなるほど、と感じます。

STEEL:50Hzが少し持ち上がり、サチュレーションが多い
IRON:100Hzが持ち上がり、サチュレーションが少ない
NICKEL:10kHzが持ち上がり、サチュレーションが少ない

使いやすく、効果が高い

JW BG-Bass を除いて、非常に扱いやすいです。そして効果がはっきりと感じられます。

音の傾向は、まさしくメタルコア系の名プロデューサーが作ったお手軽プラグインという感じで、バストラックがピタッとまとまり、完成された「製品っぽい」音になります。

強烈な Glue 効果もあり、ダイナミクスはけっこう均されます。しかし決して残念な感じにのっぺりする訳ではなく、変な例えですがなんというか製麺機を通したみたいな、製本されたような、そんな感じになりますね。

まさしく、2000年代後半以降の比較的メインストリームだったエレクトロメタルコア、それこそ Asking Alexandria とか、そっち系の処理に簡単に出来てしまうので凄いです。バスコンプなので、もちろん元のトラックの処理がきちんと決まっていることが前提にはなりますけどね。

1つデメリットを上げるとすれば、JW BG-Bass だけ色々と難しいのが個人的には残念でした。

JW BG-Bass だけバスコンプの域を超えて色々出来るので、その反面音がかなり変わってしまい設定が難しく、少なくとも他の機種のようにお手軽にはそれっぽいダイナミクス均しが出来ないですね。

まとめ

私のようなアマチュアでも手軽に「製品っぽい」質感へトラックを FIX させることが出来る、便利で効果の高いプラグインです。

作れる音の方向性は決まっており、モダンにピタッとさせる事に特化した化学調味料のようなプラグインではあります。

なので用途が合わない人には全然合わないかも知れませんが、モダンな音像にトラックを Glue させたい人にはオススメです。

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