WavesのL1、L2はミキシング用途に超使えるという話
Waves の L1、L2 ってミキシングに使えるんです。それぞれマキシマイザーのレジェンドプラグインで現代のマスタリングに使うのは厳しいかもしれませんが、タンスの肥やしにしておくのは勿体ないですよ。
Waves L1 , L2 とは
L1 と L2 は、Waves 社の有名なマキシマイザー/リミッターです。
初代が L1、2代目が L2 ですね。L3 もありますがここで取り上げるのは L2 までとします。
かつてデジタルオーディオ界に革命をもたらしたといわれているマキシマイザー。そんな中でも特に L1 は最初期の製品になると思うのですが、Waves のバンドルに入っているので所持している DTMer の方も多いのではないかと思います。
しかし、革命をもたらしたというのも20年以上前の話。現在はマスタリング用のマキシマイザーはL系よりも品質の良いものがいくらでもあります。
古いデジタル機材の使い道とは?
つまり、L1 や L2 って、古い時代の機材なんですよ。
アナログのヴィンテージなら話は別ですが、デジタルの古い機材ってあまり良いイメージが沸かないかも知れません。
上述の通り、現在はもっと品質の良いマキシマイザーが沢山ありますしね。
では何故今更これらを取り上げるのか?というかそもそも何故未だにバンドルに入っているのでしょうか?
それは、使い道がそれなりにあるからなんですよね。
ダイナミクスを均すリミッターとして
マキシマイザー/リミッターの性質は、全体の音量を上げつつ、ピークを超えないように超える部分を潰す、というものです。
コンプと同じ原理ですが、用途的にピークを絶対に超えてはいけないため、絶対に超えないようになっているのが大きな違いです。圧縮比 1/∞ などと言いますね。
つまり、L1 や L2 に突っ込むとダイナミクスを、まるでロードローラーのように強力に均すことが出来ます。
まあ、これ自体は他の機材でもそうなんですが、L1 や L2 は古い機材ゆえの独自の音色変化が発生すること、レイテンシが少ないことから、ミキシング段階のエフェクターとしてトラックやバスへガンガン使っていくことが出来るんです。
特に有用なケースとは
ダイナミクスを均しつつ迫力のある音像にしたい時に非常に有用です。
具体的にそういったミックスが求められる音楽の代表的なものとして、メタルやハードコアといったラウド系のバンドサウンドがあります。
下記の動画は海外のハードコア系のエンジニアの方が2018年に公開したものですが、「Top 10 Plugins for Metal Engineeris」というテーマで L1 がランクインしています。
つまり、現代でもバリバリ使えるというのはプロも言っている事なんですよね。
この動画ではボーカルに適用していますが、ボーカルだけでなくこのジャンルではドラムもギターもベースも、ピタッと均しつつガツッと迫力を出していく事が求められるので非常に相性が良いんです。
メタルに限らず、ガツッとした音像に仕上げたいトラックにエフェクターとして挿していけます。使い方もスレッショルドとアウトプットを調整するだけで非常にシンプルなので時短になる点も良いと思います。
L1 と L2 の違いは
前述の通りですが、Waves のマキシマイザーとして L1 が初代、L2 が2代目になります。つまり、L2 は L1 の進化系にあたります。
しかし、それぞれ音の傾向が結構違うので使い分けることが出来るんです。
L1 は、潰していくと少し歪みが加わってきて、中低域に太さが出てきます。今の基準ではマキシマイザーとしてあるまじき挙動ですが、この音質変化こそがミキシングに使える所以。太くなっても丸くはならないのがまたポイントです。
L2 は、歪みっぽくなることはなく特性もフラットです。確かに L1 から進化したのでしょう。ただし全くの無色透明というわけでもなく、潰していくと柔らかくモチっとした収まり感・押し出し感が得られます。
ちなみに L2 の進化系である L3 は高域のパリッとした感じが逆にデジタル臭くなりやすいのでミキシング用途で使われることはあまりないようです。個人的にも L3 はちょっと違うと感じます。
オススメの使い道
ここまでを踏まえて、私的にオススメの L1、L2 の使い道を紹介したいと思います。
使い方について
それぞれ使い方は基本的にスレッショルドを下げるだけ、リリースもデフォルトのままでOKですが、強いて言うならディザをオフにする必要があります。
L1 は「L1 Limitter」と「L1+ Ultramaximizer」から選べますが Limitter を選べばディザは搭載されていません。L2 は GUI から DITHER と SHAPING をオフにしてください。
潰し具合に関してはお好みでOKですが、基本は -6db 以内で調整してみて、極端にやりたければそれ以上潰してみる感じかなと思います。
ドラムのバストラックに L1
ドラムのバスにバスコンプ代わりに使うことで、Glue させつつ、太く迫力のあるドラムサウンドを作ることが出来ます。
ドラムのキック・スネアに L1
ドラムパーツ毎のトラックでも、太さと迫力を出したいキックやスネアに L1 が適しています。スネアのトップ/ボトムなどマイクポジションを複数録っている場合はそれらのバスに適用すると良いです。
ベースに L1
L1 の、歪みつつ太くなる特性はもちろんのこと、ダイナミクスレンジが非常に大きい原音を均一にする必要があるベースに対してはリミッターとしても非常に有効です。
ボーカルに L1
上記で紹介した動画でもボーカルに L1 を適用していましたが、やはり使えます。歪みっぽくジリジリと前に出しつつも、1176全部押しのような貼り付いた感じよりはいくらか自然に、ガツッと均して押し出すことが出来ます。スクリームやデスボイス系だと極端に潰したりしても良い感じです。
ギターに L2
単体トラックにもバストラックにも、ギターの暴れを抑えつつ押し出すのには L2 が有効です。ギターの場合 L1 だと角が立ちやすいのですが、L2 でモチっと Glue させると据わりが良いです。
上モノ系シンセやキーボードに L2
上モノ系についても、暴れを抑えつつ均したいという時があると思います。そんな時はやはり、角が立たずにモチッと Glue する L2 が活躍します。
まとめ
いかがでしょうか。具体例も紹介してみましたが、元はマスタリング向けのプラグインであるものの時を経た今となってはミキシングにかなり使えるんですよね、L1 と L2 って。
実際 L1 なんか最近になって GUI のリニューアルが行われましたが、それだけ愛されているという証拠なのかなと思います。
もちろん、ガツッと均して押し出すような処理が求められるジャンルやスタイルの音楽に使い道は限られるとは思います。
そういうのを想定していないエントリーやツイート等ではこき下ろされるかも知れません(笑)が、自分の耳や欲しい結果に従順になってみると意外と身近に良い発見があったりするものです。
L1 も L2 も、多くの DTMer の方のタンスの肥やしになっているプラグインかと思いますが、もしそうなっていたら一度注目し直してみてはいかがでしょうか。
また、これから DTM を始める、力を入れるという方は恐らく Waves のバンドルを通ることになると思いますので、このような使い方ができるプラグインが入っていることを是非ご認識ください。
商品情報
L1 は Gold 以上、L2 は Platinum 以上のバンドルに同梱されています。