32bit Floatって何?どういう時に使うの?

ビットレートまわりの話って作曲やミックスとはまた違った知識が必要で、独学で DTM をやっているとイマイチ理解しにくいと思います。ということで今回は「32bit Float」についての解説です。

ビットレートの話

DAW のプロジェクト設定や書き出しの際に、ビットレートの値を決める項目が必ず出てきますよね。

16bit、24bit、32bit Float…みたいな。

DTM で扱うデジタルの音データというのは、元はアナログの音を数字に変換して表現しています。この変換の具合をどれだけ細かくするか、というのがビットレート値のざっくりしたイメージです。

値が高い方が(16bit < 24bit)細かく分解できるのでデジタル変換時の劣化が少なくて音質が良いということになります。ビットレートが 8bit 上がると分解能は256倍になるそう。

CD のビットレートが 16bit で、CDより音が良いとされている一般的なハイレゾのビットレートが 24bit です。

DTMer 的にはこれくらいを分かっておけば大丈夫だと思います。

32bit と 32bit Float は別物

ややこしいのですが、32bit と 32bit Float は別物なんです。

純粋な 32bit だと、16bit や 24 bit の上位互換ということになります。ちなみに 24bit と 32bit の違いは人間の耳でわかるようなものではないとの事で、ハイレゾ=24bit が主流みたいです。

では 32bit Float とは何ぞや?という話ですが、この「Float」の部分は別名「浮動小数点数」というらしいです。

なんのこっちゃ?という感じですが、とりあえず字面から察するに小数点が浮いているっぽいですね。無印(Integerとも言う)の 32bit だと扱えるのは整数のみですが、Float(浮動小数点数)とついているものは小数点が自在に移動できる性質を持っているらしいです。

…だからなんのこっちゃ?という感じですが、細かい原理は置いておくとして我々 DTMer が覚えておくべき事としては、この性質によって録音物のオーバークリップやゲイン不足が許容されるという点です。

という事で、この点について詳しく見ていきます。

ちなみに 32bit Float の分解能(音質)は 32bit ではなく 24bit と同等らしいです。ここもちょっとややこしいポイントですね。

32bit Float のメリット

DAW のプロジェクト設定を 32bit Float にしておくことで上述の通り、録音物のオーバークリップやゲイン不足が許容されるというというメリットがあります。

これ、どういうことかというと、例えばギターなどをエフェクト掛け録りにした際に、エフェクトのアウトプットゲインを上げていたために録音物がオーバークリップしてしまった…!みたいなことがあったとします。

そうするとこんな感じで波形の上下が切れてしまいますよね。

これだと音質的に難ありなわけですが、プロジェクト設定が 32bit Float の場合ではボリュームを下げてみると…

こんな感じで、切れてしまったはずの波形が生きているんです。

これって、うっかりミスをカバーしてくれる感じにもなるし結構便利ですよね。

ただし、オーディオインターフェースのゲインを上げすぎてオーディオインターフェース内でクリップしているものは対象外です。あくまでソフトウェア内でクリップしたものに関してリカバリーしてくれます。

逆に、録音物の録音音量が小さすぎた場合にも 32bit Float は有効です。

通常は、録音音量が小さいソースの音量を上げると音質が劣化します。小さい画像を拡大コピーすると画質が荒れるのと同じ原理ですね。以下はかなり極端にやってみた例ですが、音の波形もデータなので同じことになるわけです。

しかし、32 bit Float だとこれが劣化しないんですよ。

不思議ですね。凄いですね。なので、「音量録音は出来る限り大きくしたほうが良い」という通説も、32bit Float のプロジェクト内では関係なく、録音音量をあまり気にすることなくレコーディングに専念できます。

データの書き出しは 32bit Float を推奨

プロジェクトの設定を 32bit Float にしておくことのメリットは上述のとおりですが、プロジェクトデータを音源データに書き出す際にもビットレートを選ぶことが出来ますよね。

書き出しの際も、納品用のフォーマットに出す時以外は 32bit Float を選択した方が良いです。

というのも、一旦書き出した波形データをまた DAW に取り込んで編集する際に、32bit Float で書き出しておけばその波形も 32bit Float の特性を引き継ぐ事が出来るからです。

まあ、基本的にはビットレートを落として書き出すのは納品用フォーマットを書き出すフェーズ以外でやる意味はないですから、32bit Float のプロジェクトで作業しているデータは完成までずっと 32bit Float で扱っておけばOKです。

まとめ

いかがでしょうか。この記事を書くにあたって私も勉強しました…笑

音楽…というか、データの扱いに関する話ですからね。音楽をやりたくて DTM をやっている身としては、なかなか興味や学習意欲のベクトルが向きにくい分野ではありますよね。

しかし、理解して適切に扱えているか否かで作品のクオリティに差が出てくる内容ですので、要点だけでも覚えておきたいところです。

なお、この類の話は Studio Gyokimae さんの書籍「とーくばっく」に色々と書かれています。私も読み返しながら理解を深めています。