M/S処理で迫力と広がりのあるギターサウンドを作るミキシング

DTMer なら M/S 処理という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。今回は M/S 処理とはなんぞやという話とそのメリットデメリット、そしてギターをいい感じにするオススメの使い方をご紹介します。

M/S 処理とは

通常、ステレオでミキシングを行う時はソースを L と R(左右)に分けると思います。

M/S 処理においては、ステレオ音源を L/R ではなく Mid と Side(ミッド(中央)とサイド)に分けて処理を行います。

ザックリとしたイメージですが図にするとこんな感じです。

これどういうことかというと、詳しい理屈は調べて頂きたいのですが、イメージとしてはステレオデータの中のモノラル成分(左右に差分のない成分)が Mid で、Mid を引いた残りの成分が Side になるような感じです。

M/S 処理のやり方

音源を Mid と Side に分けるというのは分かりましたが、それどうやって処理するの?という感じですよね。DAW のミキサーは L/R にしか対応していないですし。

そんな M/S 処理を行う方法ですが、対応しているプラグインを使って処理をすることになります。

例えば下記は Waves の H-EQ ですが、こちらは MODE スイッチでステレオと M/S を切り替えることが出来ます。

この図では、M/S モードにした上で、Mid の 500hz 付近をブーストし、Side をローカットしています。

M/S 処理のメリット

M/S 処理を行うことのメリットですが、検索すると諸説ありますよね…^^;

なのでググっていると良く分からなくなってきますが、私が実際にやってみた上での結論として1つだけメリットをお伝えしたいと思います。

そのメリットとは、音の広がり感を調整できるということです。

先程の図をもう一度見ていただきたいのですが、この Mid と Side の音量差を調整することで広がり感を調整することが出来るというわけですね。

これが私のような独学 DTMer がミキシングをする上で M/S 処理を用いる最大のメリットだと考えています。

逆にデメリットもあるので、これ以外の余計な事はあまりやらない方が良いかなという風にも思います。

デメリットとは

M/S 処理で Mid と Side の設定を極端に変えてしまうと不自然な音になりやすいので要注意です。

EQ であまりにも違う設定をしたり、どちらかにだけコンプを掛けたりというのは、よほど知識を深めていない限りは止めた方が良いと思います。

また、Side を持ち上げることで音圧を稼げるといった紹介がされているケースをしばしば見かけますが、個人的にこれはあまりオススメしません。

というのも、やりすぎると聴感上はかえってペラペラな音になりやすいように感じます。

芯のある部分って Mid のモノラル成分なのかなと思うので、Side をガッツリ上げることで相対的に芯の部分が小さく聴こえるようになってくるのではないかと。。あまり音圧上のメリットは考えないほうが良いかなというのが個人的な意見です。

なので M/S 処理においてはあまり極端なことをしようとせず、あくまで自然な調整を心がけるのが吉です。

M/S 処理のオススメ用途はギター

では M/S 処理はどういった時に使うのが良いのでしょうか。

私のオススメの使い方としては、左右に振ったエレキギターに適用して迫力を増幅させる使い方です。

メタルやラウド系の音源だと、私の知る限りでは大体この手法が使われているのではないかという風に思っており、クオリティを上げる上で必須レベルなのかなとも感じます。

やり方

ギターの迫力を増すやり方ですが、左右に振ったギターのバストラックに対して、Side の音量を少し持ち上げて、Mid を少し落とす感じです。

M/S の音量調節を自然に行ってくれるプラグインとしては、Waves Center が良いです。細かい理屈は割愛しますが、もはや必ずこれを使った方が良いレベル。

下記のように、CENTER(Mid)を下げて SIDES(Side)を上げます。画像ではそれぞれ 3db くらい弄っていますが、このくらいが限界でしょう。

繰り返しになりますがやり過ぎ厳禁です。やりすぎると逆にペラペラになったり、モノラルで再生された時に殆ど聞こえなくなったりするので注意です。

これをやることで左右に振ったギターがよりワイドに聴こえるようになり、ミックスバランスを損なうことなく迫力のあるミキシングが可能になります。

Waves Center は Diamond にバンドルされていますよ。

EQ の微調整もアリ

上述の通りあまり極端な設定はやらないほうが良いですが、ちょっとした EQ 調整をすることで質感をコントロールすることが出来ます。

例えば、Side にだけハイパスフィルターを掛けると、スッキリすると同時に相対的にギターのミドルの美味しい部分が聴こえやすくなったりします。

Ozone の EQ のような自然で音質変化の少ない上質な EQ で、最終的な味付けを方向付けるように使うと良いと思います。二郎系の無料トッピングみたいな感じで…。

まとめ

M/S 処理についてと、私なりのオススメの使い方について紹介してみました。

恐らくこの世界は音響の突っ込んだ話になってくるとキリがないと思われ、そちら側の専門家が永遠に語れるような領域の話だと思います。

DTMer 的には、今回紹介したようなザックリとした概念を理解しておけば、きっとミキシングに役立てることが出来ると思います。

特に今回紹介したギターへの処理は、本当にちょっとこれをやるだけで随分と製品クオリティに近づく感じがするので是非試してみてください。

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