ラウドネスノーマライゼーションについて知っておきたい、たった1つの事【DTMer向け】

DTM界隈で頻発するワードに「ラウドネスノーマライゼーション」というものがあります。マスタリングや音圧に関わる話ですが、作曲を嗜む DTMer が覚えておきたい要点を1つだけ教えます。

ラウドネスノーマライゼーションとは?

ラウドネスノーマライゼーション、ラウドネス正規化とも言いますが、こちらはざっくり言えば音圧に関わる話題です。

デジタル配信プラットフォームにおいて、プラットフォーム側で音圧が自動調整される機能のことを指しています。

ラウドネス(音圧)ノーマライゼーション(正規化)ということですね。

2020年に入ってニコニコ動画でラウドネスノーマライゼーションが導入された事が DTM 界隈で話題になっていたと記憶していますが、ニコニコ動画以外にも、Youtube や Spotify、Amazon Music など主要なプラットフォームではラウドネスノーマライゼーションが導入されています。

ラウドネスノーマライゼーションによって何が起こるのか

ラウドネスノーマライゼーションによって音圧が自動調整される事の意味を、少しだけ噛み砕いてみたいと思います。

各プラットフォームで再生される際に、音圧が高すぎる音源はボリュームを下げられ、低すぎる音源は上げられるという事は一体どういうことでしょうか。

まず第一に、リスナーにとっては各音源を一定の聴感音量で聴くことが出来るというメリットがあり、曲ごとにボリュームを調整したりする必要がなくなります。これはサービスを快適に使用できるようになるため、良い事ですよね。

では製作者、音源を納品する側にとってはどういう事でしょう。

以下、イメージを掲載します。画像の上が音圧が高い波形、下が音圧が低い波形ですが、、

これらにラウドネスノーマライゼーションを適用すると、以下のような感じになります。

…はい、もうおわかりでしょうか。

音圧が低いものを上げられることに関してはそこまで問題はないかと思いますが、音圧を爆上げした海苔波形については、海苔の形のままボリュームを下げられる羽目になってしまうんですよね。。

DTMer 的に覚えておきたい最も重要なポイントはここかなと思っています。

ラウドネスノーマライゼーションによってDTMerはどうすれば良いのか

上記のイメージで概ね伝わったのではないかと思っていますが、これはつまりどうすれば良いという事になるのでしょうか。

我々 DTMer が配信用の曲を仕上げる際に、ラウドネスノーマライゼーションについて気をつけたいポイントは、つまるところ以下の1点です。

それは、無理に音圧を上げないことです。

音圧を上げても、海苔波形のまま小さくされてしまう訳ですからね。だったら無理に音圧を上げずに、トランジェントや奥行きが失われていない状態のトラックを納品した方が良いですよね。

一応、ニコニコ動画なら -15LUFS、Spotify なら -14LUFS など、プラットフォーム毎に基準となるラウドネス値があって、出来ればこれに合わせてマスタリングをすればベストですが、どうせ自動調整されるのでそこまで気にしなくても良いのかな、とも思います。

その曲ごとに、良いと思ったバランス感で納品すれば良いのではないでしょうか。

レアケースかも知れませんが、過度なリミッティングによって音を潰すことを敢えて表現として用いる場合もあると思います。そういう場合も含めて良いと思ったバランス感で曲を仕上げていきたいですね。

ラウドネスノーマライゼーション向けの調整を簡単にする方法

好きなバランス感で納品すれば良いと思う、と言いましたが、、とはいえ、「ラウドネスノーマライゼーション対応仕様」のような形で概ね音圧感を合わせておきたい場合もあると思います。

そんな時に便利なのが、やっぱり iZotope の Ozone ですねー。

Ozone 9 からは、Master Assistant 機能を「Streaming」設定で通すと、自動で -14LUFS 付近に仕上げてくれるようになりました。

自分で -14LUFS 付近に調整するのってちょっと面倒な部分もあるのでとても助かります。

なので Ozone を持っている方はサクッと Master Assistant を通してしまっても良いと思います。(最近人気みたいなので多くの DTMer が所持しているという前提…^^;)

Ozone についての詳しい記事はこちら。

CDに関しては従来通り

ラウドネスノーマライゼーションに関する最低限認識したいポイントの紹介としては以上になります。

ただ1つだけ留意点があります。

冒頭に説明したように、ラウドネスノーマライゼーションというもの自体が、配信プラットフォームにおける仕様の話になります。

つまり、配信以外 ≒ CD などの従来からある記録媒体にプレスする際には関係のない話になりますので、これらについては従来通りの対応になってくるかと思います。

CD では引き続き音圧戦争ということですね。こちらサイドで適正音圧での納品が一般化する未来が来るのかは、どうなんでしょうね…媒体が廃れる事は当面なさそうに思いますが。

まとめ

DTMer が音源を作って配信プラットフォームに掲載する際は、ラウドネスノーマラーゼーションを考慮して音圧を必要以上に上げないようにしましょう。

最低限、そこだけ分かっていれば大丈夫です、というのが今回の記事の内容です。

より詳しく知りたければ、Studio Gyokimae さんが公開している下記の動画に網羅されていますので、興味のある方は見てみると良いと思います。私も勉強させて頂いています。

以下余談ですが、個人的に、必要以上に音圧を上げて、その曲にとってベストとは言えない仕上がりになっている音源はどうしても好きになれません。

もともと圧感があったほうが良いメタルのような音楽なら全然良いんですが、例えばバラードのような、本来静かだったり、聴かせるべき隙間があるはずの楽曲で音圧がブチ上がっていると、聴いていて疲れてしまうんですよね。

なので、必要以上に音圧を上げない流れが出来るという意味でもラウドネスノーマラーゼーションという仕組みは良いなと思っています。

ストリーミングが一般化してきていますから、この流れは加速していき、音圧戦争なんていう言葉もそのうち聞かれなくなってくるかも知れませんね。