BIAS AMP の使い方を徹底解説【アンプ自作も意外と簡単】

アンプのモデリングを自作できることが魅力の BIAS AMP ですが、そのぶんマニアックで玄人向けです。私も最初は戸惑っていたのですが、使い込んである程度把握出来てきたので音作りの仕方を解説したいと思います。
BIAS AMPを使う醍醐味
BIAS AMP を使う醍醐味は、アンプの中身を自作できることです。
BIAS AMP の大きな特徴として、アンプの中身を詳細にカスタマイズできるという点があるからですね。
これはアンプ好きにとってはたまらない魅力だと思いますし、自分の理想の音をどこまでも追い込んでいくことが可能です。
しかし反面、「アンプについての知識がないと全く意味がわからない」という事態に陥りやすいという側面もあると思います。
DTMer でギターアンプの中身を知り尽くしている人ってどれだけ居るのでしょう?少なくとも私の場合は、最初はちんぷんかんぷんでした…。
とはいえ BIAS AMP 自体、安価でとても音が良いアンプシミュレーターでもあるため、使い方がわからなくて投げ出してしまうのは勿体ないですよね。
ということで BIAS AMP のモデリングアンプのカスタマイズについて、主要なパラメーターを解説していきたいと思います。
BIAS AMPの使い方:まずはプリセットを試す
ゼロからアンプを作っても良いのですが、かなり大変です。細かいパラメータの最適解なんてマジで不明ですよ…。
なので個人的なおすすめの使い方はプリセットをベースにしてカスタマイズしていくこと。
ソフトにプリインストールされているものや Tone Cloud に上がっているものなど(Tone Cloud にも Positive Grid 公式のものがあります)で、Orange や Mesa など既存のアンプをイメージしたと思われるプリセットがいくつかあるので、自分の好きなアンプっぽいものものを引っ張ってきましょう。
BIAS AMPの使い方:カスタマイズする
さあ本題。これと決めたプリセットをカスタマイズしていきましょう。各パラメータについて解説していきたいと思います。
プリアンプとパワーアンプは部品の種類によってパラメータが若干異なったりするのですが、Standard タイプを例としてやっていきます。
PREAMP
アンプヘッド部分における基本的な音の傾向を方向付けるセクションがプリアンプです。
PRE EQ セクション
パネル左側の EQ ですね。真空管を通す前にかける EQ セクションです。
傾向としてですが、ギターは LOW を、ベースは MIDDLE をうまく落とせるといい感じになります。
ただ、いきなりですがここは弄るとかなり沼なので、プリセットを信じる方向でそのままか微調整程度にとどめておいたほうが良いです。。
真空管セクション
パネル中央の色が濃いところです。ここで真空管周りの種類や傾向を選べます。
まず INPUT STAGE TUBE と CATHODE FOLLOWER TUBE ですが、これらはそれぞれメインの真空管とサブの真空管です。
12AX7 というのは、モダンなアンプによく使われている気持ちよく歪むタイプの定番の真空管です。ロック系なら基本はこれで良いのかなと思います。
他の真空管の選択肢ですが、概ねリストを下に下っていくほど歪みにくくクリーンよりの音になっていくイメージです。
下のツマミを見ていきましょう。
GAIN KNOB は真空管セクションへのインプット量で、右に回すほど真空管の色付けと歪みが強くなります。
あと、Standard タイプは Bright スイッチがあるのでモダン系ならONにしておきたいところ。
TUBE STAGES はプリアンプを何個使うかという感じで、多いほうが太く余裕のある音になり歪みも強力になりますが、敢えて少ない真空管で思い切り歪ませてドライブ感を出したりなどもアリです。
DISTORTION はその名の通りですが、プリアンプ部における最終的な歪みの量を調整します。
LOW CUT FREQ、HIGH CUT FREQ はフィルターです。右に回すほどローカット、ハイカットが強く(EQポイントが高い/低い周波数になる)掛かっていきます。
BIAS ADJUST は、HOT側に回すと押し出し感・暴れ感のある音に、COLD側に回すとダークな音になります。このパラメータは実機だと変な事をすると壊れるらしいのですが、シミュレータなので好きなように設定できます(笑)
POST EQ セクション
PRE EQ と真空管セクションを通った後の音に改めて EQ をかけるセクションです。
ここも沼なのでプリセットままか微調整程度にしておくことをオススメします。。
TONE STACK
トーンスタックのセクションで主にやることは TONESTACK TOPOLOGY のタイプを選ぶことです。
ここはもうお好きなものを…という感じですね。
キャプチャで選択されている British Modern は恐らく Orange Rockerverb 系だと思っているのですが、American 5153 は Peavy 5150 かなとか、American Tweed は Fender Twin Reverb かなとか、、あからさまにイメージ元が分かりやすいものもあります。
ここの EQ セクションはアンプ前面のツマミに連動しているので、ここでは弄らなくて OK です。
POWER AMP
プリアンプで作られた音を増幅する役目を持つパワーアンプですが、ここにも音質に関わるパラメーターが存在します。
TOPOLOGY
パワーアンプ部の動作方式を選びます。
SOLID STATE はいわゆるトランジスタ、PUSH PULL は真空管を沢山使う(キャプチャの通りなら4本)、SPLIT LOAD と SINGLE ENDED は真空管1本で、それぞれAB級とA級です。
なんじゃそりゃって感じですが、いわゆる真空管アンプらしい太い音が欲しければ PUSH PULL を、トランジスタのパキッとした感じが欲しければ SOLID STATE を、真空管1本で頑張って絞り出している感が欲しければ SPLIT LOAD を、、というイメージです。SINGLE ENDED はちょっとマニアック過ぎて使い道が分かりません。。
真空管セクション
パネル中央(Standardだとやややや右より)のセクションはプリアンプと同じく真空管周りの設定が出来るセクションになります。
真空管セクションです。基本はプリアンプの時と一緒ですが、若干項目が変わっています。
INPUT STAGE TUBE は真空管の選択肢です。EL34 はハイゲインと相性が良く、6550 はクリーンやベースと相性が良いイメージです。
実は自分はそれ以外はあまり知らないのですが…好きなアンプのスペックを調べて同じものを選択して見るのが良いのかなと思います。
それから TOPOLOGY で SOLID STATE を選んだ場合は真空管自体を使っていないので、ここの種類による音質変化はありません。
MASTER と DISTORTION はそのまま音量と歪み量です。
SPLITTER GAIN は真空管への負荷の掛け具合で、回すほど真空管の色付けと歪みが強くなります。
POWER GAIN はパワーアンプ部へのインプット量だと思うのですが、音質変化的には DISTORTION との違いが分かりにくいかもです。
BIAS ADJUST はプリアンプと同じでHOT側に回すと押し出し感・暴れ感のある音に、COLD側に回すとダークな音になります。
また、Standard タイプにはありませんが、HEADROOM というツマミがある場合は、上げておくと音場の広さやモダン感が出てくるのでオススメです。
POST EQ?セクション
何セクションというのが適切なのか分かりませんが、画面右側の背景色が若干薄くなっている所。真空管セクションを通った音の最終的な調整が出来ます。
PRESENCE はどのアンプにもついている超高域の調整で、アンプ前面のツマミと連動しています。ここだけトーンスタックではなくパワーアンプ部との連動なのが興味深いですね。
RESONATE はちょっとうまい説明が難しいのですが、低域を中心に輪郭が変わります。ゴリッとした感じを出したければ上げておくと良いかもですが、よく分からなければあまり弄らなくても良いと思います。
TRANSFORMER
Transformer は整流管といって、パワーアンプから出てきた交流電圧をスピーカーに流すために直流電圧に変換する装置です。
ここでもまた音が変わるんですね。アンプって複雑。
RECTIFIER TUBE TYPE
整流に使う真空管の種類を選べます。選択肢は2種類。
基本は GZ34 で、ヴィンテージ系にしたければもう1個の方の 5Y3GT を試すイメージで良いかと。
コンプレッサー
下部左側に並ぶツマミはパラメーターの通りコンプです。左上のスイッチはコンプの Knee だと思います。
コンプの詳しい説明は割愛しますが、ほぼほぼ音を作り終えた後のセクションなのでダイナミクスへの影響は結構あるので変にかかりすぎていないか要確認です。
GR メーターを挟んで右側にある OUTPUT はコンプレッション量と合わせて調整しましょう。
DYNAMIC TONE
その名の通り、ダイナミック EQ 的な挙動のトーン(高域調整)で、回すと高域が減衰します。
細かい挙動は不明なものの、ダイナミック EQ につき自然な効き方をするので、前段までで高域をブーストしておいて、ここで少しトーンを絞ると結構気持ち良くてオススメです。
TRANSFORMER TYPE
画面右側の部分です。トランスフォーマーのタイプというものを選べます。
British、American、Fat、Pure の4種類の選択肢がありますが、ここでかなり性格が変わるので、最終的な味付けとして好みのものを吟味しましょう。
CAB
上記まででアンプ部分の音作りについては終わりですが、スピーカー部分=キャビネットシミュレーターがまだあります。
ここでも大幅に音が変わりますので、アンプ部分以上に重要とも言えます。IR を読んでしまうのもあり。
CAB MODEL
CAB MODEL ですが、その名の通りキャビネットモデリングの種類を選びます。
ここで大幅に音が変わる上に種類も多いのでかなり沼です。ちゃっかり全キャビに対して Open と Close も選べる。
よって予め使うものを決めておくと良いと思います。アンプ側の設定もキャビの特性に合わせて追い込んでいくイメージ。
私の場合は Orange の PPC412 というキャビが好きなので、Celestion Vintage 30 の 4発(Elite を買っていない場合は OR-V30s)を使うと決めています。
マイキング
横方向はスピーカーの真ん中に当てると高域のジャリッとした感じが強く出て来、横にずらしていくほどミドルが強く丸くなっていきます。
縦方向は、マイクとスピーカーが近いほど低域が強く出てきて、押し出し感もあります。
離すとロートハイが落ちていき、空気を含んだ音になりますが、離す距離によって質感が全然変わってくるのでいろいろ試して見てください。よく分からなければおとなしく近づけておくのが吉です。
これらを2本混ぜることが出来、更にマイクの種類も選べるのでマイキングだけでもかなり奥が深いですね。
まとめ
こうして書き出してみて改めて思ったのですが、弄るパラメーターがめちゃくちゃ多いですね、BIAS AMPって。
だからこそどこまでも追い込んでいける玄人向けのソフトという側面もあるのですが、プリセットベースでちょっと好みに合わせて調整するだけでも結構十分なクオリティが出せますので、初心者でも大丈夫です。
私のように使い込んでいくうちに段々分かってくる場合もありますしね。
という感じで、BIAS AMP を弄りたいけど良く分からんという方は、まずは真空管を変えるあたりからでも、ちょっとずつ弄ってみると良いのかなと思います。
参考になれば幸いです。