【Plugin Alliance】Millennia NSEQ-2 レビュー
Plugin Alliance で販売されているマスタリング向け EQ プラグイン、Millennia NSEQ-2 をご紹介。その独特な魅力について語りたいと思います。
Plugin Alliance Millennia NSEQ-2 とは
Plugin Alliance Millennia NSEQ-2 は、 Millennia 社の NSEQ-2 という同名の実機機材をプラグイン化した製品です。
実機はいわゆるブティックタイプと呼ばれる少数生産の高級品のようです。そんな実機を、Plugin Alliance 製品 ではもはやお決まり(※)ともいえる Brainworx のモデリングによってプラグイン化されたものが今回紹介するものになります。
そんな NSEQ-2 ですが、モノとしてはマスタリンググレードの4バンドパラメトリック EQ になります。もちろんトラックにも使っていけますよ。
動作方式を真空管と FET で切り替えられるのが最大の特徴だと思います。またプラグイン版ならではの機能として M/S 処理に対応しています。
NSEQ-2 の特徴と使い方
ほぼ左右対称の GUI は、左右でそれぞれ L と R 又は Mid と Side の処理を個別で行うことが出来る仕様です。
別々でなくて普通に処理したい時は「LINK」を点灯させておけば、片方を弄ればもう片方にも反映されるステレオリンク仕様になるので便利です。
センター部分のアップです。
「TWIN TOPOLOGY」のところで回路を J-FET と真空管から選択できます。これで結構キャラクターが変わるのが面白いです。
J-FET は明瞭にパキッとかかる感じで、真空管のほうは柔らかくふくよかな厚みのあるサウンドになります。まあそれぞれのイメージ通りでしょうか。
サウンドキャラクターを変える項目としてもう一つある「GAIN RANGE」、こちらはオンにしておいたほうが自然なかかり方をします。
左右にある EQ 部分(の片方)はこんな感じになっています。
4バンドで、選択肢から帯域を指定して使うタイプのパラメトリック EQ になります。特別に変わった項目はなく、オーソドックスな仕様です。
アナログ機材らしいツマミとスイッチによる UI と黒系のクールな色使いが格好良いです。
パライコの特徴として挙げられるのは、帯域の選択肢が絞られていることによって機材特有のサウンドキャラクターが出やすい事かなと思っています。
CPU 負荷はこんな感じ。軽い部類なので、マスタリング目的だけでなく各トラックにもガンガン使っていけますね。
NSEQ-2 は自然なブーストが魅力
出音、音質についての所感を書いていきたいと思います。
Millennia NSEQ-2 は、カットよりもブースト方面に強みを発揮する傾向にある EQ だと思います。
まあ、それ自体も色々なところで言われていると思いますが、実際に使ってみれば納得すること必至でしょう。私も納得しました。
なんというか、非常に自然でリッチな嫌味のないブーストをしてくれます。自然でありながらも他の EQ にはない質感なのでなかなか言語化が難しいですが、とにかく綺麗に格好良く帯域を持ち上げることが出来ますね。
傾向は自然と言いつつも完全に超ナチュラル系というわけでもなくて、いい意味で化学調味料っぽい味付けも絶妙に混ぜながらうまい塩梅に落とし込まれている印象。
基本的に高級感があってブーストしても変に前に出てくることもない綺麗で自然な仕上がりなんですが、そんな中にわずかに覗くケミカルな分かりやすい旨味。この感じが NSEQ-2 でブーストした時の格好良さのポイントかなと感じます。
開発者側も主にブーストでの使用を想定しているのか、ブーストして大きくなってしまった音量を下げる「TRIM」という項目がある反面、カットして小さくなった音量を持ち上げる項目はありません。
TRIM で上がった分の音量を戻してやってからバイパス状態と比べると、「あ、こんな綺麗に持ち上がったんだ」というのが凄く実感できます。
その反面カットに使うとなんというか特に面白みのない味気ない感じの音で、「わざわざこのプラグイン使う意味ある?」的な雰囲気が絶妙に醸されてきます。悪くはないんだけど面白みがないし、なんか変な硬さも出てくる気がしますね。
ブーストとカットでここまで違うって面白いですね。とりあえずブースト専用機と思ったほうが良さそう。
まとめ
Plugin Alliance Millennia NSEQ-2 をご紹介させて頂きました。
実のところ、ブースト専用 EQ という役割が自分の用途ではあまり出番がなく、割とタンスの肥やし状態になっていたプラグインではありました。
しかし改めて使ってみたらやっぱり良い音するので、使い所を見つけたくなってきます(手段と目的が…
個人的には使うならマスターやバスに挿して、最終的なキャラクターの味付けをする用途で使うのが良いかなと思います。
例えばちょっとモダンなパンチを出したい時に、2mix に NSEQ-2 を挿して 1kHz 付近をちょっとブーストしてやる、みたいな。
しっかりと効果を感じられつつも違和感のない自然な仕上がりに出来るので、最終的な味付けというポジションが非常にしっくり来るように感じます。
他の EQ (DTM 界隈でよく見かけるプラグイン、という範疇にしておきます) にはあまりない質感だとも思うので、是非この質感を試してみて欲しいなと思う次第でした。